親のマンションを相続したらまずやるべきこと|手続き・税金対策・注意点を専門家が解説
2025.11.07
親のマンションを相続したとき、「何から手をつければいいのか」と迷う方は多いでしょう。
名義変更や税金、管理費など、放置するとトラブルにつながる手続きもあります。
この記事では、親のマンションを相続した際にまず確認すべきことや、手続き・税金対策の基本を解説します。
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親のマンションを相続する前に確認すべきこと
親のマンションを相続する際は、法的・経済的な視点から現状を整理することが大切です。
「名義は誰なのか」「維持費はどの程度かかるのか」「建物の状態は良好か」といった点を確認しておくことで、後の手続きやトラブルを未然に防ぐことができます。
ここでは、相続前に必ず確認しておくべき4つのポイントを解説します。
登記名義と相続人の関係を確認する
相続手続きを始める前に、まずマンションの登記名義人が誰なのかを確認しましょう。
法務局で「登記事項証明書」を取得すれば、所有者の名義や共有者、持分割合が分かります。
名義が親の単独であれば手続きは比較的簡単ですが、祖父母や親族との共有名義の場合は、相続人が増えて手続きが複雑になります。
この段階で誰がどの権利を持っているのかを把握しておくことが、円滑な相続手続きにつながります。
管理費・修繕積立金・固定資産税の負担を把握する
マンションを相続すると、毎月や毎年発生する維持費も引き継ぐことになります。
管理費や修繕積立金は継続的に支払いが必要で、固定資産税や都市計画税も毎年課税されます。
固定資産税の明細は市区町村で確認できるため、相続前に問い合わせておくと安心です。
マンション売却時にかかる税金について詳しくはこちら→新宿区のマンション売却にかかる税金と特例制度|節税のポイントも解説
築年数や建物の劣化状況をチェックする
築年数や建物の劣化状況は、資産価値だけでなく、将来的にかかる修繕費にも大きく影響します。
築25年以上のマンションでは、外壁や配管の老朽化が進み、大規模修繕が必要となる時期に差しかかっている場合があります。
【確認しておきたい主な資料】
- 管理組合が作成した長期修繕計画書
- 管理規約や総会議事録
- 過去の修繕履歴
これらを確認しておくことで、今後の修繕計画や費用負担の見通しを把握でき、売却後のトラブル防止にもつながります。
遺言書や共有持分の有無を確認する
相続手続きを進める前に、まずは遺言書の有無や共有名義の状況を確認しておきましょう。
遺言書がある場合は、その内容が相続人間の協議よりも優先され、法的効力を持ちます。
一方で、遺言書がない場合は、相続人全員による「遺産分割協議」を行う必要があります。
また、マンションが親や他の親族との共有名義になっている場合は、売却や賃貸などの手続きに全員の同意が必要です。
そのため、早めに関係者間で方針を話し合っておくことが大切です。
親のマンションを相続する手続きの流れ
マンションを相続するには、法律に基づいた手続きが必要です。登記や名義変更を正しく行わないと、トラブルや罰則の対象になることもあります。
ここでは、相続の基本的な流れと必要な手続きについて、わかりやすく解説します。
相続手続きの全体像を確認する
相続手続きとは、亡くなった親の財産や権利関係を整理し、誰がどの割合で引き継ぐかを決めるための法的手続きです。
不動産だけでなく、預貯金・保険・借金なども含めて全体を把握することが大切です。
まずは、次の基本的なステップを順に確認しましょう。
【相続手続きの基本の流れ】
- 被相続人(亡くなった親)の戸籍を収集する
- 現時点での書類上の相続人を確認する
- 遺言書の有無を確認する
- 相続財産(不動産・預金・借金など)を調査する
- 相続方法(単純承認・限定承認・相続放棄)を決定する
- 遺産分割協議を行う
- 相続登記・名義変更を完了する
さらに詳しい相続手続きの流れを知りたい方は、「新宿区で不動産を相続したらどうする?名義変更・税金・売却判断について」をご覧ください。
相続登記(名義変更)に必要なこと
2024年4月から、不動産の相続登記(名義変更)が義務化されました。相続が発生したことを知った日から3年以内に登記を完了する必要があります。
期限内に正しく手続きを進めることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
【相続登記の主な流れ】
- 被相続人と相続人の戸籍謄本を準備する
- 遺産分割協議書を作成する
- 登記申請書を作成し、法務局に提出する
- 登記完了後、登記事項証明書で内容を確認する
遺産分割協議から登記完了までの手順
相続人が複数いる場合は、「誰がどの財産を相続するか」を話し合う「遺産分割協議」が必要です。
ここで全員の合意を得られなければ登記できません。
【遺産分割協議の進め方】
- 相続人を確認する
- 相続財産の内容を整理する
- 分割方法を話し合う
- 合意内容を遺産分割協議書にまとめ、全員が署名・押印する
【登記に必要な書類と費用の目安】
| 書類名 | 費用の目安 | 概要 |
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 | 1通あたり約450円 | 相続関係の確認に使用 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 1通あたり約450円 | 相続人の資格を証明 |
| 不動産の登記事項証明書 | 1通あたり約600円 | 不動産の権利関係を確認 |
| 固定資産評価証明書 | 1通あたり約300〜400円 | 不動産の評価額を確認するために使用 |
| 遺産分割協議書 | 作成無料(専門家依頼時は3万〜10万円程度) | 相続内容を明文化 |
相続放棄や限定承認を検討すべき場合とは
相続するマンションに「住宅ローンの残債」や「管理費の滞納」などがある場合、無条件に相続してしまうと債務も引き継ぎます。
このような場合は、相続放棄や限定承認を検討する必要があります。
- 相続放棄:プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄
- 限定承認:プラスの財産の範囲でのみマイナスの財産を支払う
これらの手続きは、相続開始から3か月以内に家庭裁判所で行う必要があります。
期限を過ぎると単純承認(すべて相続)と見なされるため、早めの判断が重要です。
マンションの相続後にかかる税金と費用を抑える方法
マンションを相続したあとに、多くの人が驚くことが、維持にかかる税金や費用の負担の大きさです。固定資産税や管理費、修繕積立金などのコスト、が所有している限り継続的に発生します。
ここでは、相続後に発生する主な税金や費用の内容と、それらの負担を軽減するためのポイントをわかりやすく紹介します。
相続税の基本と税額の計算方法
まず確認しておきたいのが、相続税が発生するかどうかです。
相続税は、亡くなった方(被相続人)の財産総額から基礎控除額を差し引いた残りに対して課税されます。
【相続税の基礎控除額の計算式】
⚫︎3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば相続人が子ども2人の場合、
3,000万円+600万円×2=4,200万円まで非課税になります。
つまり、マンションの評価額と預金などを合計してもこの金額以下であれば、相続税はかかりません。
固定資産税や管理費などの維持費に注意
相続後は、所有している限り毎年発生する維持費にも注意が必要です。
マンションを所有している限り、以下のような費用が継続的に発生します。
| 費用項目 | 年間の目安 | 内容 |
| 固定資産税・都市計画税 | 10〜30万円 | 所有者に毎年課税される税金 |
| 管理費・修繕積立金 | 20〜40万円 | 管理組合に毎月支払う維持費 |
| 火災・地震保険 | 2〜5万円 | 万一の災害リスクに備える費用 |
また、空き家の状態で放置すると、管理費や税金だけがかかる「赤字資産」になりかねません。
住む予定がない場合は、早めに売却や賃貸として活用することが、費用を抑える最善策です。
関連記事:新宿区で不動産を売却したら確定申告が必要?申告の流れと必要書類を解説
売却や賃貸で節税するポイント
相続したマンションは、「売る」か「貸す」かで税金の考え方が変わります。
売却する場合は譲渡所得税がかかりますが、相続による所有期間の引き継ぎで多くのケースで長期譲渡所得として扱われ、税負担を軽減できる可能性があります。
また、「空き家の3,000万円特別控除」などの特例で節税が可能です。
一方、賃貸に出す場合は、家賃収入で固定資産税や管理費をまかなえるため、維持費の負担を抑えられます。
ただし、家賃収入は所得税の課税対象になるため、減価償却費や経費を正しく計上しておくことが大切です。
関連記事:【宅建士が解説】マンションを売る?貸す?最適な判断のポイント
マンション相続で起こりやすいトラブルと対処法
マンションの相続は、金銭や名義などの権利関係が絡むため、家族間でトラブルが発生しやすいのが現実です。
実際、相続トラブルの約7割は「不動産」が原因といわれています。
ここでは、親のマンションを相続する際に特に起こりやすい3つのトラブルと、それぞれの具体的な対処法を解説します。
兄弟や相続人同士の意見が割れる場合の対策
マンションの相続で最も多いトラブルが、兄弟や親族間の意見の対立です。「住み続けたい人」と「売却して現金で分けたい人」で意見が分かれ、話し合いが長期化するケースもあります。
感情的にならず公平な判断をするためには、次のような対応を取ることが効果的です。
【対処法】
- 【第三者を交えた話し合い】:税理士・司法書士・不動産会社などの専門家が入ることで、感情的な対立を避け、冷静な判断がしやすくなります。
- 【不動産の査定を行う】: 不動産会社に査定を依頼し、資産価値を正確に把握することで、納得感のある分割方法を検討できます。
- 【現物分割以外の方法を検討】: 「代償分割」や「換価分割」を活用すれば、相続人全員が公平に利益を得られる形で解決しやすくなります。
管理費の未払いによるトラブルに注意
親のマンションを相続した後、意外と多いのが管理費や修繕積立金の滞納によるトラブルです。
被相続人が亡くなる前に未払いがあった場合、その債務は相続人に引き継がれます。
滞納を放置すると、遅延損害金の発生や法的措置、最悪の場合は競売に発展することもあります。
管理費の滞納は信用にも影響するため、早めの確認と対応が重要です。
【対処法】
- 【相続後すぐに管理組合へ連絡し滞納状況を確認】:現在の滞納額や発生期間、支払方法を明確にします。
- 【支払いが難しい場合は分割払いを相談し書面で合意】:合意内容は必ず書面化し、将来の行き違いを防ぎます。
- 【早期売却で清算を検討】:収支悪化が避けられない場合は、売却代金で滞納分を清算する選択肢も有効です。
名義変更を後回しにするリスク
名義変更(相続登記)を後回しにすると、思わぬトラブルにつながります。
2024年からは相続登記が義務化され、相続開始を知ってから3年以内に登記を完了しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。
放置すれば、相続人の増加で登記が複雑化し、売却や担保設定ができなくなることもあります。
こうしたトラブルを防ぐためには、次のような対応が効果的です。
【対処法】
- 【相続発生後は3か月以内に登記準備を開始】:必要書類の収集や方針決定を早期に進めます。
- 【登記書類の作成は司法書士に依頼】:不備による差し戻しを防ぎ、確実に手続きを完了させます。
- 【相続人全員で名義人を決定】:将来の管理・売却方針も併せて合意形成しておくとスムーズです。
親のマンションを相続する際によくある質問
ここでは、実際に不動産会社への相談で多く寄せられる代表的な質問を、わかりやすく解説します。
相続したら名義変更は必須?
はい、相続によって不動産の所有権が移る場合、名義変更(相続登記)は必ず行う必要があります。
登記をしないままでは法的に所有者と認められず、売却や住宅ローンの申込みができません。
また、2024年からは「相続登記の義務化」が始まり、相続開始を知った日から3年以内に登記を行わなければなりません。
期限を過ぎると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
トラブルを防ぎ、資産を守るために早めに登記を済ませることが大切です。
相続したマンションを賃貸に出すときの注意点は?
相続したマンションをそのまま賃貸に出すことは可能ですが、いくつか注意すべき点があります。
【主な注意点】
- 【住宅ローンが残っている場合は金融機関の承諾が必要】:居住用ローンは「本人が住む前提」で契約されているため、無断で賃貸に出すと契約違反になる場合があります。
- 【管理会社との契約内容を確認する】:相続後も旧所有者名義の契約が続いていると、トラブルの原因になります。契約者変更の手続きを忘れずに行いましょう。
- 【家賃収入には所得税がかかる】:経費(修繕費・管理費・固定資産税など)を計上して節税が可能ですが、確定申告が必要になります。
共有名義の場合、管理費や修繕積立金は誰が払う?
共有名義で相続した場合、管理費や修繕積立金、固定資産税は持分の割合に応じて各相続人が負担します。
ただし実際には、代表者がまとめて支払い、後から精算するケースが一般的です。
トラブルを避けるためには、支払方法や負担割合を事前に話し合い、書面で残しておくことが重要です。
共有名義のまま放置すると、売却や処分の際に全員の同意が必要となり、手続きが進まなくなるリスクがあります。
将来のトラブルを避けるためにも、早い段階で単独名義への変更や売却による整理を検討しておくことが望ましいです。
まとめ|親のマンション相続で損をしないために
親のマンションを相続する際は、名義変更・税金・費用・登記などの手続きを正確に進めることが重要です。対応を後回しにすると、思わぬ出費やトラブルを招く恐れがあります。
早めに状況を整理し、専門家の助言を受けながら、資産を守る最適な方法を選択しましょう。
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