新宿区の共有名義の不動産は売却できる?必要な同意・売却方法・注意点を解説
2026.07.20
新宿区で相続した不動産や、夫婦で購入したマイホーム。こうした共有名義の不動産は、いざ売却しようとすると「自分だけの判断では売れない」という壁にぶつかりがちです。共有者との同意や売却方法を誤ると、思わぬトラブルや金銭的な損失につながることもあります。この記事では、共有名義の不動産を売却するために必要な同意の範囲、具体的な売却方法、そして新宿区ならではの注意点までを整理して解説します。

共有名義の不動産とは?まず押さえたい基礎知識
共有名義と共有持分の違い
共有名義とは、1つの不動産を複数人で共同して所有している状態を指します。このとき、それぞれの所有者が持っている所有権の割合を共有持分といいます。たとえば、3,000万円のマンションを夫婦それぞれが半分ずつ出資して購入した場合、持分は各自「2分の1」となります。
ここで注意したいのは、持分はあくまで「所有権の割合」であって、「不動産の特定の部分」を指すものではないという点です。持分2分の1だからといって、建物の右半分や部屋の一室を単独で使えるわけではありません。共有者は、持分の割合に応じて不動産の全体を使用できる、という考え方になります。
この違いは、売却方法を考えるうえでも重要になります。後述するように、持分だけであれば単独で売却できますが、不動産そのもの(全体)を売る場合には共有者全員の関与が必要になるためです。
共有名義になりやすい主なケース(相続・夫婦・親子)
共有名義は、意図して選ぶ場合もあれば、結果的にそうなってしまう場合もあります。代表的なケースは次の3つです。
相続によるケースが最も多く見られます。親が所有していた不動産を複数の子が相続する際、遺産分割の話し合いがまとまらず、法定相続分のまま複数人の共有として登記するパターンです。特に不動産は現金のように単純に分けられないため、「とりあえず共有」という形が選ばれがちです。
夫婦によるケースも一般的です。マイホームを購入する際、夫婦それぞれが資金を出し合ったり、ペアローンを組んだりすると、出資割合に応じた共有名義になります。
親子によるケースは、二世帯住宅の購入や、親子でローンを分担する場合などに生じます。
いずれのケースも、購入・相続の時点では問題が表面化しにくい一方、売却や相続が重なるタイミングでトラブルの火種になりやすい点は共通しています。
共有名義の不動産は売却できる?必要な同意の範囲
共有名義の不動産でも売却は可能です。ただし、「何を売るのか」によって必要な同意の範囲が大きく変わります。全体を売るのか、自分の持分だけを売るのかで手続きがまったく異なるため、ここを正しく理解しておくことが第一歩になります。
全体を売るには共有者全員の同意が必要
不動産そのもの(全体)を売却する場合、共有者全員の同意が必要です。一人でも反対する共有者がいれば、その不動産を丸ごと売ることはできません。これは、不動産全体の売却が民法上の「変更(処分)行為」にあたり、共有者全員の同意を要すると定められているためです。
具体的には、売買契約の締結や決済・引き渡しの場面で、共有者全員が当事者として関与します。全員が実印を押し、印鑑証明書や本人確認書類を用意する必要があるため、共有者の一人が遠方に住んでいたり、認知症などで意思表示が難しかったりすると、手続きが滞ることも少なくありません。
なお、共有者の中に判断能力が低下した方がいる場合は、成年後見制度の利用が必要になるケースもあります。こうした事情がある場合は、早めに司法書士や弁護士などの専門家に相談しておくと安心です。
自分の持分だけなら単独で売却できる
一方、自分が持っている持分だけであれば、他の共有者の同意を得ることなく、単独で売却することが可能です。自分の持分は自分の財産であるため、その処分は各共有者の自由とされているからです。
ただし、単独で売却できるからといって、安易に選べる方法とは言い切れません。持分だけを買い取る相手は、共有関係に入ることを前提とした不動産買取業者などに限られやすく、一般の買主が見つかることはほとんどありません。その結果、売却価格が本来の持分価値より低くなりやすいという現実があります。持分売却のメリットとデメリットについては、後の売却方法のパートで詳しく整理します。
2023年の民法改正で見直された共有のルール
共有名義をめぐっては、2023年4月に施行された改正民法によって、いくつかのルールが見直されました。従来は共有者の一部が所在不明・連絡不通の場合に手続きが進まず、不動産が「塩漬け」になる問題が指摘されていました。
改正では、こうした所在等不明共有者がいる場合でも、裁判所の関与のもとで、その持分を他の共有者が取得したり、第三者に譲渡したりできる制度が整えられました。また、共有物の管理に関する意思決定のルールも明確化されています。
ただし、これらの制度の利用には裁判所への申立てなど一定の手続きが必要で、要件も細かく定められています。連絡の取れない共有者がいて売却が進まないといった場合には、こうした選択肢があることを念頭に置きつつ、具体的な進め方は弁護士などの専門家に確認することをおすすめします。
共有名義の不動産を売却する主な方法
共有名義の不動産を売却する方法は、大きく4つに分けられます。それぞれ手続きの難しさや得られる金額、他の共有者との関係への影響が異なります。自分の状況に合った方法を選べるよう、順番に見ていきましょう。
共有者全員で協力して売却する
最も高値で売りやすいのが、共有者全員が協力して不動産全体を売却する方法です。一般の不動産市場で通常の物件として売り出せるため、持分だけを売る場合に比べて買主の幅が広く、相場に近い価格で売却しやすくなります。売却して得た代金は、持分の割合に応じて分配します。
デメリットは、前述のとおり共有者全員の同意と協力が欠かせない点です。売却の意思や希望価格、売却時期について足並みをそろえる必要があり、一人でも反対や非協力があると成立しません。共有者間の関係が良好で、話し合いがまとまる見込みがあるなら、まず検討したい方法です。
自分の持分を第三者に売却する
他の共有者の同意が得られない場合でも、自分の持分だけを第三者に売却することは可能です。共有者との交渉がまとまらないときの選択肢になります。
ただし、買い手は共有持分を専門に扱う買取業者などに限られやすく、売却価格は相場より低くなる傾向があります。また、自分の持分を第三者に売ると、残された共有者はその第三者と共有関係を続けることになるため、他の共有者との関係が悪化しやすい点にも注意が必要です。単独で完結できる手軽さの反面、金額面・関係面でのデメリットも小さくありません。
他の共有者に持分を買い取ってもらう
自分の持分を、他の共有者に買い取ってもらう方法もあります。共有関係を外部に広げずに解消でき、買い取る側にとっても不動産を単独名義にできるメリットがあるため、双方の利害が一致しやすい方法です。
売却価格や支払い条件は当事者間の話し合いで決めますが、身内同士でも金銭が絡む取引である以上、後々のトラブルを避けるために、持分の評価額を客観的に算定し、契約書を交わしておくことが望まれます。買い取る側にまとまった資金が必要になる点は、実現のハードルになることがあります。
分筆して単独名義にしてから売却する
土地であれば、分筆して単独名義にしてから売却する方法も考えられます。分筆とは、1つの土地を登記上複数の土地に分割することです。共有していた土地を持分に応じて分け、それぞれを単独名義にすれば、自分の土地として自由に売却できるようになります。
ただし、分筆には共有者の合意に加え、土地家屋調査士による測量や登記手続きが必要で、時間と費用がかかります。また、分割後の各土地が接道義務を満たさなくなる場合や、面積が小さくなって利用価値が下がる場合もあり、どの土地にも等しく価値が残るとは限りません。マンションなどの区分所有建物では分筆という手法自体が使えないため、この方法が向くかどうかは物件の種類によって変わります。
新宿区で共有名義の不動産を売却する前に注意したいこと
ここまでは全国共通の基本を見てきました。ここからは、新宿区で共有名義の不動産を売却する際に、特に意識しておきたいポイントを整理します。地価が高く、相続や区分所有が多い新宿区ならではの事情が、共有名義のトラブルに影響することがあります。
相続で共有のまま放置された物件が新宿区に多い理由
新宿区のような都心部では、地価が高いために遺産分割が難航しやすい傾向があります。不動産の価値が大きいほど、誰がどのように引き継ぐかで意見が割れやすく、結論を先送りにして「とりあえず法定相続分のまま共有で登記する」というケースが目立ちます。
しかし、共有のまま放置すると、時間の経過とともに問題が複雑になりやすいものです。共有者の一人が亡くなれば、その持分はさらに次の相続人へと引き継がれ、共有者の数が増えていきます。関係が疎遠な親族同士の共有になってしまうと、いざ売却しようとしても全員の同意を取り付けることが難しくなります。共有名義の不動産は、早めに方針を決めておくほど選択肢が広がると考えておくとよいでしょう。
マンション(区分所有)は分筆できない点に注意
新宿区は、戸建てよりもマンションの割合が高い地域です。ここで注意したいのが、分譲マンションのような区分所有建物は分筆ができないという点です。
前のパートで触れたとおり、分筆は土地を分割する手法であり、建物の一室を対象とする区分所有マンションには使えません。そのため、新宿区で多いマンションの共有では、「分筆して単独名義にする」という選択肢が最初から取れないことになります。共有関係を解消するには、全員で売却する、持分を売買する、といった方法から選ぶことになるため、戸建てよりも取り得る手段が限られる点を理解しておく必要があります。
地価が高いほど持分売却は不利になりやすい
新宿区は都内でも地価の高いエリアです。地価が高いということは、同じ「2分の1」の持分でも、動く金額がそれだけ大きくなることを意味します。
持分売却は相場より価格が低くなりやすい方法ですが、もとの不動産価値が高いほど、その値下がりの影響額も大きくなります。たとえば全体で6,000万円の価値がある不動産の2分の1の持分であっても、持分売却では市場価値どおりの3,000万円で売れるとは限らず、実際にはそれを下回る金額になることが少なくありません。金額のインパクトが大きいぶん、安易に持分だけを売る前に、他の方法と比較して慎重に判断することをおすすめします。
税金・諸費用は共有者ごとに考える
共有名義の不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その税金は共有者それぞれの持分に応じて個別に課税されます。売却代金が持分割合で分配されるのと同様に、譲渡所得税も各共有者が自分の持分に対応する分を申告・納税する仕組みです。
マイホームを売却した際の3,000万円の特別控除など、税負担を軽くする特例もありますが、その適用可否は共有者ごとの状況によって変わります。適用要件は個別事情によって細かく異なるため、実際にどの特例が使えるかは、税理士など専門家に確認することをおすすめします。共有者間で税負担の認識を共有しておくことも、後のトラブルを防ぐうえで大切です。
まとめ|新宿区の共有名義不動産の売却は専門家への相談を
共有名義の不動産は、全体を売るなら共有者全員の同意が必要で、自分の持分だけなら単独でも売却できます。ただし持分売却は価格が下がりやすく、特に地価の高い新宿区では金額の影響も大きくなりがちです。まずは共有者全員での売却を軸に、状況に応じて最適な方法を選ぶことが大切です。
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